鮮魚仕入についての一考察。本当に産地直送が安いのか、について考えてみました。(2)

昨日に引き続いて「鮮魚仕入は産地直送が本当に安いのか」についてです。昨日は時間の都合上、尻切れトンボになってスミマセンでした!

簡単に昨日の話をまとめますと、

・水産業界はサプライチェーンが長い(関わる業者数が多い)ので、いわゆる「中抜き」をすると効果的にコスト削減を実現できるはず。

・ただ、実際には(居酒屋応援隊®も含めて)産地直送鮮魚を仕入れてみると、市場流通で地元の業者から仕入れた場合より高かったという事例がよくある。

これはなぜか?

というところで終わっておりました。そこで本日はこの続きを。

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産直鮮魚の方が市場流通より高くなる場合の理由の1つ目は
ボリュームが(市場流通に比べて)少ないから
だと思います。要は経費と手間の問題です。

例えば市場流通に出荷する場合だと、タンクもしくは氷を打った鮮魚箱に魚を入れて

数十キロ、数百キロ、
漁模様によってはトン単位

そのまま出荷できます。

イメージ的には

ドーンと水揚げした魚を

P7290094

バーンと氷を打って同じ種類の魚をまとめてタンクに入れて

漁港20120626 (8) 漁港20120626 (17)

そのまま出荷!

漁港20120626 (3) 20130319 (39)
※漁の少ない日でも鮮魚箱に入れるくらいで出荷

※もちろんイマドキの漁師さんは魚の扱いは丁寧ですのでその点は安心してくださいね。

伝票も1枚書いておしまい!

みたいな感じで、どちらかといえば漁師さんの好みの仕事スタイルに近いかな?と思います。

これが産地直送の鮮魚出荷になると、
1. 水揚げした魚の中からいいものを選別して
2. 種類の違う魚を受注金額に合わせて組み合わせて
3. 発送用の箱に魚が傷まないように丁寧に詰め込んで
4. 送り状も1箱ごとに書き込んで
5. 宅配便業者さんを呼んで出荷(代金受け取りも後日)

となるので、魚は1種類でも可、内容おまかせ、というものでも少なくとも荷造り包装作業は必要なわけで、これって意外と手間がかかるんです。そうなると、少なくとも手間代はしっかりもらいたい、ということになるのが人情だと思います。

余談ですが以前、紹介で富山県氷見漁港の浜仲買さんを訪問した際に「前金を入れるからお客様のオーダーに合わせて鮮魚出荷して頂けませんか?」とお願いをしたことがあるのですが、「細かい仕事は漁港の役割ではないので卸売市場の仲買さんに頼んで欲しい」と断られたことがあります。他の漁港や浜仲買さんにも同じことを何度かお願いしたことがあるのですが、ほとんどの場合は「手間がかかって割に合わない」との理由で受けて頂けませんでした(保守的な業界ということも理由のひとつではあります)。今、居酒屋応援隊®で鮮魚セットを発送して頂いている漁協さんや仲買さんにしても、干物や他の仕入れもあるから対応してくださっている、という側面が少なからずありまして、多分何の取引もなしに「鮮魚発送だけ」とお願いしてもなかなか首を縦に振ってはくれないかもしれません。だから、物流の川上の業者さんで鮮魚出荷をしてくれるところがあれば、それだけでも結構貴重なことだと個人的には思います(いっぱい断られてきている人としてはホントにそう思います)。

更にもう一歩踏み込んで言えば、なぜ物流の川上(この場合は漁師さんや漁港)が「中抜き」をして売る努力をするかと考えれば、当然「1円でも高く買って欲しいから」ということだというのは御理解頂けると思います。だから当然、(昨日の輪島の魚を築地の仲買さんから仕入れるという例で言えば)「築地の仲買さんが店舗に納品するであろう価格」は価格設定の基準のひとつにはなるでしょう。

つまり、我々買い手側(対市場や対漁港という視点では居酒屋応援隊®も買い手側です)の視点と売り手側の視点が違う訳で、

【買い手側の視点】
漁獲/製造/仕入れ原価 + 売り手の利益 = 売価

と考えているのに対し、

【売り手側の視点】
買い手の値ごろ感 = 売価
※もちろん原価は意識するが、値ごろ感を重視する

という観点でも見ている、ということです。

あっ、あくまでも誤解のないようにお願いしたいのですが、決して産地直送の業者さんが暴利をむさぼっている、ということではなくて、「手間賃は明確なものではないので、結局はお客様にとっても値ごろ感があって、供給側もある程度適正な利益を確保できる金額」というところが値決めの基準になる、ということですので。横文字で言うところの「ウイン・ウイン(Win- Win)の関係」を目指しているということです。

もちろん漁師さんだって、お客様が「産地直送の方が安いと期待している」くらいの事は理解されていますよ~。それに何度も取引をして仲良くなると、もともと人の好い方が多いので、

「今日は時化で魚が高かったけど、居酒屋○○さんにはいつも買って頂いているから今回は原価+運賃くらいでいっか~」

みたいなことは結構してくれるところも多いです。だから、産地直送に取り組むのであれば1~2回で判断するのではなく、週1回とか、月1~2回とかでもいいので3か月とか、半年とか、我慢しながら気長にお付き合いする必要がある、と私は思います。やっぱり完全に人間関係の世界ですからね…。

でも、そこまでの人間関係が構築できていなくても、例え今回が初めての一見様でも、供給側だってお客様は増やしたいのでなるべくリピーターになって頂けるように「お客様にとってのお値打ち価格」で出荷はしていると思います。

だから、
産地直送の鮮魚は市場への卸値ほどのメチャ安価格ではないものの、それなりにお客様がお値打ち感を感じて頂けるように価格設定して出荷しているはずです。

でも、時々産直鮮魚の方が高い時があるのは何故?

…というお話の続きはまた明日!
(スミマセン、熱が入って長くなりすぎたので今日はここまでにさせてくださいっ!)