どうして漁師は大した金額にもならない幼魚をリリースしないで獲ってしまうのか、についての考察。
先日より北陸では鰆(さわら)の幼魚・さごしがたくさん水揚げされています。それを各漁港の業者さんが買い付けて凍結しているため、居酒屋応援隊の出荷冷蔵庫・ケイソン冷蔵さんも凍結作業に大忙しでした。
※ダンベと呼ばれるこの大きなお風呂の浴槽みたいなタンクいっぱいに魚が入ります。
お聞きするとキロ単価で50円や100円程度とのことで、これを凍結して輸出するんだそうです。今、特にアフリカ諸国は経済が上向いてきていて世界からどんどんと魚を高い値段で輸入しているそうで、このロットも恐らくアフリカ行きになるのだとか。アフリカの人が魚を食べている姿ってあんまり想像できないんですが、ノルウェー産のサバなどもアフリカにかなりの量が仕向けられているとの話を聞いたこともあるのでまんざら嘘ではないのだと思います。
さて、そのように水揚げされた魚たちですが、キロ50円ってもの凄く安いですよね!1トン仕入れても50000円にしかならないっていうことですから。
何故そんなに安い価格になるのか、といえば魚種の問題もありますが、一番は大きさの問題。やっぱり立派な成魚サイズになるとだいたいの魚は4桁のキロ単価で取引されるのですが、これが幼魚のサイズであったり、1尾で食べるには小さいけれど調理は大きいサイズと同じだけの手間がかかる中途半端なサイズ(1尾70gくらいのアジとか・・・)だったりすると、極端に評価が下がります。まぁ、それは調理の手間や歩留りを考えると至極当然なことかな、と思います。
じゃあ、そんな大した金額にもならない小魚なんかリリースして大きくなってから獲ればいいのに!
と考えるのはとても自然な流れで、私もそう思っていました。ちなみに居酒屋応援隊の商品で言えば
豆のどぐろ
https://izakayaouentai.co.jp/item/view.cgi?no=216 【PC】
https://izakayaouentai.co.jp/sm/view.cgi?no=216 【スマホ】
豆メバル唐揚げ
https://izakayaouentai.co.jp/item/view.cgi?no=145 【PC】
https://izakayaouentai.co.jp/sm/view.cgi?no=145 【スマホ】
などがこれらに該当する魚になると思うのですが、展示会などでこれら商品を御紹介しても必ず耳にするのが「なんでこんな小さい魚を獲るんかな~」というお声。
この前、たまたま仕入先でその話になったので船主さんに聞いてみたところ、漁師側には彼らなりの理由がありました。簡単に言えば
そこに魚がいるから・・・。
ということに集約されるのですが(どこか登山家の人が似たようなフレーズを言っていたような・・・(笑))、要はこういう事のようです。
■(理由1) 沖に出るまでの重油代は固定費である。
漁船は重油を燃料として動くのですが、小さい漁船でも燃費はかなり悪く、リッターあたり1㎞程度という驚きの燃費の悪さ!つまり、沖合に出るだけで燃料費がかかる訳で、大漁であろうがボーズ(魚が獲れない)であろうがその経費に変わりはないことになります。つまり、「沖に出た以上は目の前にあるものは全て獲って来る!」というのが漁業者の(目先の)経済原理にかなっている、ということになります。もちろん、漁獲資源保護の観点からも漁協さんも網目を大きくしなさい、とか指導はされているのですが、やっぱり目の前にいる魚は獲っちゃうかもしれませんね。
■(理由2) 沖合で選別している時間なんかない!
水揚げは一気にしてしまわないといけない作業ですので、漁の途中で小魚だけを選別する暇はない!というのも現実だと思います。サイズの大小の問題ではなく、折角苦労して水揚げした魚を手放すという事自体に心理的な抵抗もあるのではないかな、とも思います。「どんぶり勘定」という言葉で水産業界は表現されることも多いですが、まさしく豪快な(悪く言えば大雑把な)人が多いのもまた事実。漁港によっては魚のサイズ選別さえ安定しないで出荷してくるところもあるくらいですから、ましてや海の上で小魚を選別してリリースするなどと言う面倒くさい作業をするくらいなら、「えーい、このタンクまとめて10000円!」とか投げ売りした方が気性に合っている、なんてこともあるのかもしれませんね。
■(理由3) 手間をかけてリリースしても、大きくなった時に自分のところに帰って来るとは限らない。
やはり一番大きな理由は(理由1)だと思いますが、そこまで手間をかけてリリースしても大きくなった時に自分の網にかかってくれるとは限らない、だったら二束三文だけど今日持って帰って売ってしまおう!という気持ちになるのも判らなくはないです。漁業権や漁協があって、「魚はみんなの資源」という大前提はあってもやはり漁師さんは船ごとに個人事業主でもある訳で、その辺の損得勘定もやはり本心ではあるのだとお聞きしたこともあります。ただ、以前中国人華僑の方にお聞きした話ですが、中国人も基本的にこの感覚が強いらしく、以前はアマダイなどの漁獲資源が豊富だった香港近海から東シナ海の沿岸部を根こそぎ獲って水産資源を枯渇させた、ということもあるみたいですので、やはり「魚はみんなの資源なので大切にしよう」という意識をもっと漁師さんに浸透させる努力が大切になるのだと思います。
こうして考えてみると、「そっかぁ~、そう言われれば仕方ないよね」と思える部分と、「えぇ~っ!それって甘いよね。」と思える部分があるのは事実ですが、これはなにも漁師さんに限った話ではなく、いろんな業界でもやはり無駄や矛盾があるはず。ただ客観的・長期的にみると現状が将来の水産資源減少の一因になってしまいかねないということも事実でしょうから、今後も漁師さんが小魚をリリースしやすいような環境を整えていくということも必要な議論かもしれませんね。
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金沢直送 居酒屋応援隊
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居酒屋応援隊の運営責任者として居酒屋さんの御商売繁盛をお手伝いしてはや10年。4000店舗を超える取引実績から得た「売れるメニュー作り」のノウハウを武器に、居酒屋さんの売上アップ、コスト削減のお手伝いをしています。また単なるノウハウの提供にとどまらず、独自の仕入れルートと商品開発力で居酒屋さんの売上アップに必要な食材を取り揃え、すぐに成果が出せる仕組みを持っているのが強みです。調理師免許あり。
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