営業時間短縮要請に従うか、従わないのか、経理的観点から考えてみた。

この記事は約 5 分で読めます。


コロナウイルス感染者の増加に伴って一部に緊急事態宣言が出されることとなり、今回は飲食店を対象とした営業時間短縮要請が出されるなど、飲食店を経営される皆様には厳しい年明けになっていきそうです・・・。

報道によると今回の営業時間短縮要請に従わない事業者は店名を公表する等のペナルティも課される方向だそうですが、現実的にはこれ以上の協力は資金的にも難しい・・・、とお悩みの飲食店オーナー様も多いのではないでしょうか?

実際、飲食チェーン大手のグローバルダイニングさんは「要請には従いません」とハッキリ公表されていますし、逆に要請に従います、と営業時間の短縮を公表しているお店もたくさんあります。



緊急事態宣言の発令に関して、グローバルダイニング代表・長谷川の考え方(2021年1月7日現在)


ウチはどうすればベストなのか?

飲食店の皆様に商品を仕入れて頂いて商売が成り立っている弊社としても色々と思うことはあるのですが、取りあえずそうした意見はさておいて

じゃあ、どうすればいいのか?

について、経理的な視点で考えてみました。※居酒屋応援隊の柴田は前職では取締役として資金繰りや経理業務なども担当し、現在も真洋創商株式会社の代表取締役として財務に関する一切の業務と税務申告を税理士さんに委託せず自分で行っております。

財務や経理に詳しい方からすれば初歩的な話にはなりますし、論点をシンプルにするために社会通念や道義的な観点は考慮していませんのでその点はご容赦頂き、ひとつの考え方として聞き流して頂ければ幸いです。

時短要請に従うか、従わないか、の判断基準

皆さんにとって一番大切なのは「生き残っていけるか」という点だと思いますが、それを大きく左右するのはお金です。したがって、「時短要請に応じたら金銭的にプラスになるか」が大きな判断基準になるかと思います。※重ね重ねになりますが、今回は社会通念や道義的な観点は考慮しませんのであしからず。

時短要請に従った場合の試算

報道によると、時短要請に従った場合は協力金として1日6万円が事業者単位に支払われるそうです。ここから計算していきましょう。
仮に1か月の営業日数を25日とすると、
60,000円×25日=1,500,000円 
となります。

月商150万円未満のお店は要請に応じた方が得

  • 月商が150万円未満

のお店なら経理的には要請に従ってお店を閉めた方が得です。
常連様とのつながりを絶やさないというマーケティング的視点からすれば8時まで営業する、という選択肢も検討の余地あり、ですが、経理的には完全休業にした方が最低限の固定費(従業員さんの給料や家賃など)だけで済みますから、逆にプラスになるかもしれません。

月商150万円以上のお店は損益分岐点から判断する


月商150万円以上の規模のお店になると、損益分岐点との兼ね合いになります。

お店の経営をされている方であればもう肌感覚で分かっていらっしゃると思いますが、

【事業を運営する費用(コスト)】=〈固定費〉+〈変動費〉

です。

  1. 固定費は家賃や従業員さんの基本給部分、水道光熱費の基本料金や設備のリース代など売上に関わらずかかる費用
  2. 変動費は食材費や光熱費など売上に比例してかかる費用

なので、

1.の固定費が月に150万円を超えなければ要請に従ってお店を閉店した方が良い、という計算です。仮に固定費比率が売上の50%とすると、150万円÷0.5=300万円となるので、月商300万円までのお店なら完全に閉めた方が良い、という計算になります。

あとは、完全に営業をしないか、20時までは営業を続けるか、という判断をすることになりますが、20時まで営業すると食材も最低限は仕入れる必要が出てきますし、変動費も少しは出ますので、そこは貴店で20時までにどれくらい売上・利益が見込めるか、によって判断していく必要があります。

当てはまらないお店は従うと赤字になる可能性が大きい

以上の2パターンに該当しないお店(≒固定費が月に150万円以上掛かっている)は経理的に考えると営業時間短縮要請には従わず、営業を続けた方が良いということになります。立地の良い場所は家賃も高いでしょうから、そういったお店がこのパターンに該当するでしょうね。

通常営業をしたところでそのコストを賄うだけの売上(来客)があるのか、というところはやってみないと分からないですが、少なくともお店の営業を続けないと何かしらの赤字は出てしまう計算になります。その赤字見込み額を計算した上で、(他の社会的な要素や資金繰りも考慮して)自粛要請に応じるのか、応じないのか、を判断していくことになると思います。

以上、先が見通せない中で、オーナーさんは何かしらの判断を迫られることとなりますが、そもそもなぜ飲食店だけが狙い撃ちにされるのかの根拠が乏しい今回の政策です。もちろんいろいろな状況を総合的に考慮しての判断が必要ですが、そもそもこの政策に合理性があまり感じられない以上、しっかりと各お店が考えて対応を考えても良いのではないか、と思います。その判断の際のひとつの考え方としてお役に立てれば幸いです。