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のどぐろは金沢直送!居酒屋応援隊®でも大人気のお魚ですが、
そもそも「ノドグロ」ってどんな魚?
という方もいらっしゃると思うので、今日はのどぐろについてご説明しますね。もうこの記事を読んで頂いたらのどぐろのことはすべて理解できた!と思って頂けるように、今まで私が知っていたことをベースにそこから更に頑張って調べましたので、ちょっと長いですがお付き合いくださいね。
【のどぐろという名前の由来】
そもそもこの「のどぐろ」という名前、実は俗称でして標準和名は「アカムツ」と言います。ちなみに魚類は世界的にもその地域・地域で独自の呼び名があったりしてややこしいので(※1)、魚種の確定には学名のラテン語を使う(※2)のですがそれで言えば”Doederleinia berycoides”という名称になります。
※1. 例えば金沢では「さわら」と言えば「カジキマグロ」を指します。ややこしいでしょ(笑)。この話に興味のある方はコチラの記事で。
※2. 学名と標準和名についてはコチラに詳しく記述がありますので宜しければご参考まで。
生物の学術上の名称のことです。国際的に統一して使用するために、ラテン語で表記されます。種の名称は2語で示されます。たとえば、ウナギの学名はAnguilla japonicaです。前の方の名称は属名、後ろの名称は種小名といいます。属名と種小名は、我々の「姓」と「名」のようなものです。似た種をまとめたものが属です。属をまとめたものを科といいます。科の上のグループは目(もく)、目の上には綱(こう)、綱の上には門、そして門をまとめたものを界といいます。このように生物を階層的に整理することによって多様な生物を分類することができます。ウナギは動物界の中で右のように分類されています。属名と種小名は習慣的にイタリック体で表記します。
最近はのどぐろという名前の知名度がかなり上がってきたので他の産地でものノドグロとして流通する場合もありますが、日本海側以外の地域では依然としてアカムツとして流通している場合も多いのではないでしょうか(少なくとも私が金沢に引っ越してくる前(15年くらい前)には大阪や京都の卸売市場では「アカムツ」として流通していた記憶があります)?
では、なぜアカムツをのどぐろと呼ぶようになったのか?理由はご想像の通りで、この魚の口を開けると喉(ノド)が黒く見えるから(即ち、喉黒)、と言われています。
↑要はこういうことです。
ただ確かに正面から口を開けると喉(ノド)が黒く見えますが、これは真っ黒な薄皮が喉(ノド)に付いているからで、その黒い薄皮をはがすとその下はきれいな白身です。そして、のどぐろという名前では喉(ノド)だけが黒いようなイメージになりますが、下の画像の通り、実際にはこの黒い薄皮は喉だけでなく内臓までありますので、厳密に言えば「ノド(と内臓)グロ」と言うのが正しい表現になるのかもしれません(どうでもいい話ですが・・・。)
ちなみに先程の学名(Doederleinia berycoides)でググってみたら、どうやら英名でも”Blackthroat seaperch”(直訳すると「喉(ノド)の黒い鯛(もしくはスズキ)」)と言うらしく、この辺の「見た目の特徴で名前をつける」というのは万国共通なんだなぁ~と妙に安心しました。
※http://www.fishbase.se/summary/4599より。
【のどぐろはどこに生息しているのか?】
のどぐろと言えば能登・金沢を中心とする北陸地方はもちろん、山陰地方や新潟などでも水揚げされるので日本海の魚というイメージが強いですが、実は日本でもいろいろな地域で水揚げされるようです。のどぐろの産地であると同時に日本でも有数ののどぐろ消費地でもある金沢には全国からたくさんののどぐろ(アカムツ)が搬入される場所でもありまして、金沢市中央卸売市場には地物ののどぐろに加えて高知や三重、静岡といった太平洋側や長崎・佐賀に水揚げされる東シナ海のアカムツ(のどぐろ)も大量に入荷してきます。まぁ、基本的には日本近海はどこにでもいそうな感じですね。
また、日本海を挟んだ北側の韓国でも水揚げが盛んで、韓国側で水揚げされたのどぐろは地元で消費されたり、鮮魚や冷凍魚として日本に輸入されてきたりもしています。最近は対馬近海で「紅瞳」というブランドののどぐろが大量に金沢市卸売市場に並ぶ日が多いのですが、その「紅瞳」と韓国産のものが市場でもよく見かける産地のものになりますね。
※韓国・プサンの魚市場にて。こんな感じで木箱にドカッと入ってきていました。この時は冬で気温がマイナス10度くらいだったので、搬入される魚が市場に置いておくだけで徐々に凍っていっていました。
さて私の経験だけでは足りないので、ネットで調べてみましたが生息域は
分布
分布は太平洋西部。日本から東南アジア、オーストラリアまで。日本では関東より南の太平洋や、新潟、九州の海に生息[6]。生態
水深100 – 200mに生息する[7]。主に砂底を住居としている。
※wikipediaより
ということのようです。日本近海はイメージがつくのですが、東南アジア~オーストラリアって温かい地域にも生息しているんですね。そう言えば15年くらい前にベトナムに買い付け出張に行った時、のどぐろっぽい魚が水揚げされているのを見つけて「この魚をのどぐろの代用で輸入したら売れるかもなぁ~」なんて考えたことがありますが、ひょっとすると本物ののどぐろだったのかもしれませんね。もったいないことした~(涙)。
のどぐろの脂
超高級白身魚としての地位を確立しつつあるノドグロですが、その最大の特徴はなんといってもその脂のノリ!
赤いダイヤとも、泳ぐ松坂牛とも言われるほど脂のノリが良い魚です。脂のある日本近海で獲れる魚で言えば、「西ののどぐろ・東のキンキ(キチジ)」という横綱クラスの評価になるでしょうか。ただ脂が乗っていればノッているほど良い、と評価されるようになったのはそんなにも昔の話ではないようです。以前はギンダラ、シマホッケ同様に「脂がベトベトして美味しくな~い」と敬遠されていたようなのですが、日本人の食の欧米化や嗜好の変化に伴って「脂があり過ぎて気持ち悪い魚」が「脂のある美味しい魚」に評価が変わってきたと水産業界の先輩から教えて頂いたことがあります。この辺は時代の変化を感じますね。
さて、その脂ノリですが、最近では果実の糖度計などと同じように測ることができるようになってきているみたいです。以前は身の一部を切り取ってすり身にして検査機にかけていたそうですが、今では人間の体脂肪計の応用で魚を傷めることなく「ピッ」と測定できるみたいですね。
ココから画像をお借りしてきました。
このいわゆる脂ノリは一般的には脂質含有率という数値で表現する事ができるようで、インターネット上で島根県水産試験場さんがのどぐろで脂質含有率を測定した結果を公開されていました。
島根県水産試験場発行「トビウオ通信号外・とびっくすNo6.」よりお借りしました。さらに詳しい説明はこちらからどうぞ。
この資料によると、やはり漁場(エサ)や魚体の大きさ、そして個体差による差異があるものの、200~300gの魚体のもので脂ノリが良いのどぐろだと脂質含有率は25~30%になるそうです。
でもこの数値ってどれくらいスゴイの?
というのがイマイチ判りにくいので、いろいろなものと比較してみましょう。
厚生労働省の運営する生活習慣病予防のための健康情報サイトによると、
体脂肪率は男性で15~20%女性で20~25%が「普通」、男性で25%以上女性で30%以上が「肥満」と判定されます。
と記述があるので、やっぱり脂のノリが良い魚は人間でいうところの肥満ですね(笑)。
他の魚の脂質含有率を文部科学省の「日本食品標準成分表(七訂)」で調べてみたところ以下の通り。
・あゆ(養殖)の内臓 55%
・あんこうのキモ 41.9%
・ウナギの白焼き 25.8%
・クロマグロの腹(いわゆるトロ) 29.3%
・太西洋サバ(いわゆるノルウェーサバ) 26.8%
・マジェランアイナメ(メロの事です) 22.9%
・太刀魚 20.9%
・キチジ(キンキ) 21.7%
・ギンダラ 18.6%
※特記のないものは生での数値。
※「日本食品標準成分表(七訂) 10.魚介類」より抜粋。
養殖アユの内臓とアンキモはかなり危険ですね(笑)。そして意外にも太刀魚が脂質高いのにもビックリ。
他の食材とも比べてみないとイマイチ判らなかったので畜産品を調べてみたら以下の通り。
・若鶏もも肉(皮つき) 14.2%
・若鶏手羽先(皮つき) 16.1%
・合鴨 29.0%
・豚ロース(脂身つき) 19.2%
・和牛リブロース(脂身つき) 56.5%
・和牛サーロイン(脂身つき) 47.5%
・和牛ヒレ(赤肉) 15.0%
・輸入牛リブロース(脂身つき) 15.4%
・輸入牛サーロイン(脂身つき) 23.7%
・輸入牛ヒレ(赤肉) 4.8%
・くじらの皮 68.8%
※「日本食品標準成分表(七訂) 11.肉類」より抜粋。
和牛がいかに霜降りになって脂肪分がたっぷり入っているか、が輸入牛肉と比べると一目瞭然ですね。そして若鶏や豚肉より合鴨肉の方が脂肪分が多いというのは意外。和牛は意図的に脂質含有率を増やすように飼育しているので、それを除けば脂のある魚とお肉ではお肉の方が(脂質含有率という点では)ヘルシーと言うのも意外でした。
少し話が横道に逸れたので元に戻します。上図・ノドグロの重量と脂質含有率の調査結果をみると、もちろん個体差はありますが、おおよそ200g以上の個体だと脂質含有率が15~35%、300gを超える魚体だと下限値が底上げされて20~35%といったところになるようですね。他の魚の脂肪含有率も同じように魚体の大きさによって異なってくると推定されますが、まあ、いずれにせよのどぐろがキンキ(キチジ)やいわゆる北欧サバ、メロ、ギンダラなどといった一般に「脂ノリが良さが特徴と言われている魚たち」には勝るとも劣らずといったところは間違いなさそうですね。
美味しいのどぐろの見分け方
のどぐろを食べようと思う時に一般的に人々が期待するのはやっぱり「脂のノリ」になると思いますので、「美味しいのどぐろ」≒「脂の乗ったのどぐろ」と仮定してみますと、美味しいのどぐろの見分け方の第一歩は「魚体の大きなものを選ぶ」ということになるように思います。そしてこれは他の魚同様、同じ重量ののどぐろでも「お腹がボテッと肥えているもの」を選ぶ、というのがその次に優先すべき要素になるでしょうね。でもそれでもあくまでも一般論的な基準になるので、それ以上の精度を求めるのであれば上でご紹介した脂質含有率を測定する機械を買うしかないということになるでしょうか。ただし、それを買ったところで店頭でピッと測定して欲しい1尾だけを分けてもらえるか、は別の問題としてあるとは思いますが…。
個人の方であれば1尾だけお金に糸目をつけずに払って美味しいのどぐろを買う、ということも可能でしょうが、外食業界でお仕事をされる皆様にはコスト(原価)という大きな制約要素があります。基本的には「大きな魚体」≒「脂が乗っている」という相関がありますが、それは同時に「魚体が大きい」≒「単価も上がる」という相関関係も加わってきますので、そのバランスが難しいところですね。
余談ですが10年近く前、とある全国チェーン店の仕入責任者の方から「ウチの社長がお客様との会食でのどぐろ料理をと言われているので、値段はいくらでも構わないから最高ののどぐろを仕入れて欲しい」と依頼がありまして、その時は漁師さんに直接依頼して、1キロ超の能登半島産のどぐろを市場に出荷する前の段階で確保してもらったことがあります。
たしか1尾で9000円くらいしたような・・・。
←その時の写真です。
※なんと、その時は贅沢なことにそののどぐろを西京漬けにしてお出ししました。
のどぐろの美味しい調理方法
以前はシンプルに塩焼きや煮付で提供されることが多かったのどぐろですが、知名度の上昇に伴っていろいろな調理方法も開発されてきているようですね。最近は首都圏にも進出している北陸発の高級回転ずしのお店ではのどぐろのお刺身やお寿司なんかも提供されていますし、いろいろな調理法でのどぐろを楽しめる世の中になりました。
個人的にはシンプルに塩焼きが大好きなのですが、
バッチリ脂が乗って美味しそう・・・。
日によっては脂ギトギトがつらい日もあるので、少し脂を落として旨味を増した一夜干しも捨てがたいところです。
上で少し書きましたが、飲食店経営の場合はお客様にも飲食店側にも予算があり、誰もが高級料亭で提供されるような超高級なお料理を常に必要としている訳ではないという視点も大切です。それなりの価格で「これはお値打ち!」と納得できるような料理を期待して来店される方が大半でしょうから、飲食店経営では手頃な単価の食材を仕入れることが大切になります。ただその中には当然少し脂質の落ちるものも入ってくるわけで、それも含めて素材の味をいかにうまく調理して来店されたお客様に提供してお値打ち感を出していくか、というところが料理人の皆様の腕の見せ所ということにもなりますよね。では、実際にはどんな調理方法が良いのか。参考になる検証を先ほどもご紹介した島根県水産試験場のサイトで見つけたのでご紹介します。
“味”についての問いでは、両調理法とも脂が多ければ、やや味が濃く感じる傾向がみられました。また、“どの程度脂が乗っている”と感じるか、の問いでは、両調理法とも脂が多いものが上位でしたが、その感じ方のバラツキの度合いは塩焼きの方が大きいようでした。さらにこのくらいの“脂の乗り”だと美味しいと感じるか、の問いでは、煮付けでは“脂の乗った”「のどぐろ」に対する評価は安定的で高評価であったのに対し、塩焼きでは脂が多くても高い評価が得られず、さらに低い場合の評価が大きく分かれました。煮付けに比べ、塩焼きの方が脂の乗りに対する評価が不安定であることが分かりました。
※島根県水産技術センター トビウオ通信 号外「とびっくすNo.25」より抜粋。さらに詳しいデータや説明はこちらをご覧ください。
塩焼きと煮付の比較では、当然ながら塩焼きの方が素材本来の味(脂ノリ含め)を感じやすいため、のどぐろの個体差や食べる人の主観(のどぐろとはこんな味だというイメージ)が評価に反映しやすいようです。煮付にすると醤油をはじめとするいろいろな調味料で味を整えますから、個体差や主観差のブレ幅が平均値に近くなるのかもしれませんね。
更に突き進んでこんな検証データもありました。
脂質含有量の異なる「のどぐろ」の 試食アンケート結果を図 1(個別の意 見は表 1)に示しました。 “塩味”についての問いでは、脂が多ければ、やや塩味が薄く感じられる傾向が認められました。つまり、「のどぐろ」で美味しい開き干しを作製する際は、塩分を脂質含有量ごとに調整することが必要と考えられました。次に脂の乗り具合と、それに対する官能評価(美味 しいと感じるか?)の問いでは、脂の乗りは脂質含有量が多いほど実感できるものの、美味しさとの関連性でみると、A、B、C でそれほど大きな差が認められず、Aよりも、むしろBの方が高評価でした。
※島根県水産技術センター トビウオ通信 号外「とびっくすNo.26」より抜粋。さらに詳しいデータや説明はこちらをご覧ください。
なんと!驚くべきことに干物にすると必ずしも「脂質含有率が高い」=「美味しく感じる」ではないようです。
もちろん最低限の脂のノリは必要だとは思いますが、この試食アンケートから推察するに「ある程度の適度な脂のノリ」の方が美味しいと感じるようですね。だとすれば、
脂がしっかり乗っているのどぐろ → 塩焼きや煮付、刺身用途
若干脂質が少ないのどぐろ → 干物や西京漬などの加工品
というのもすべての食材を美味しく召し上がって頂くためのひとつの判断基準になるのかもしれませんね。
ちなみに干物は脂のノリに応じた塩加減が必要なようですが、居酒屋応援隊の干物はその道ウン十年の干物の職人さんたちが魚の状況に合わせて塩加減を調整しますので安心して使って頂けますよ。
以上でのどぐろに関するまとめは終わりになりますが、ここまでず~っとのどぐろの説明や写真を見ていたら
のどぐろっていいなぁ~
のどぐろをメニューに加えてみるかな!
のどぐろ美味しそう♪食べたい!
と思われた方も多いはず。居酒屋応援隊ではいろいろとのどぐろの加工品や素材を取り揃えておりますので、是非ご検討下さいね!
【のどぐろ製品ご案内】
のどぐろ製品は脂が乗っている分脂焼けもしやすく保管も難しいのでなかなかバラ売りしているお店もありませんが、当店では以下の商品を小ロットから販売させて頂いております。
のどぐろ一夜干し80/100
1枚80~100gと少し小ぶりに感じるかもしれませんが、ノドグロは脂が特に多いお魚ですので一口・二口で充分満足して頂けます。ノドグロも他の魚介と同じく大きくなるほど単価も高くなりますので、美味しさや大きさとお手頃感のバランスを保っているちょうど良いサイズです。
豆ノドグロ開き干し
酒の肴や朝食の簡単な一品として豪華なノドグロを提供できます。一口サイズですが脂はしっかりとしたノドグロです。1尾単価の安さが人気の商品です。
【ご案内】ノドグロ以外にも興味深い魚介類に関しての情報をまとめています。お時間あればぜひこちらもご覧くださいね。
おかげさまで飲食店様に海産物を販売させて頂いて10年以上。たくさんの飲食店経営者様や料理長様ともお付き合いやご指導を頂いて参りました。
魚屋ですので食材提供を通じてのご提案や問題解決が中心となりますが、いろんなお店での工夫や情報も入ってきますのでひょっとしたら貴店のお悩みも解決できるかも!
店長の柴田はコンサルタントではないのでご相談はもちろん無料です。どんな些細な事でも結構ですのでお気軽にご相談ください。
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