これさえ読めばあなたも今日からブリ博士! ぶり(鰤)についてまとめてみました。【ぶりについて徹底調査】

この記事は約 14 分で読めます。

相変わらず寒~い日が続いていますが、気温・海水温が寒くなればなるほど脂が乗ってきて美味しいのが魚介類。中でも北陸の天然寒ぶりは今が旬で一番美味しい時期です。

今回は「ぶり」についてまとめて調べてみました。これさえ読めばあなたも「ブリ博士」間違いなし!

天然ぶり
氷見の寒ぶり。

ブリは縁起の良い出世魚です。

一般にブリ(鰤)と言えば日本で生まれ育った人なら知らない人はいないと思いますが、稚魚・幼魚から成魚になるまでの間に呼び名が変わっていくいわゆる出世魚です。当地・北陸でも富山と金沢で若干呼び名が違ったりするのですが、北陸の水産物流通の中心地である金沢の呼び方で言いますと、

こぞくら
こぞくら


ふくらぎ
ふくらぎ


がんど(はまち)
がんど(はまち)


ぶり
ぶり

と呼び名を変えて出世していきます。

大雑把に言えば、関東・関西で言う「ツバス」が「ふくらぎ」、「はまち」が「がんど」と言ったところでしょうか。私も元々は大阪の出身なのでこちらに来た時にはびっくりしたのですが、北陸ではこのツバス(ふくらぎ)サイズより小さな「こぞくら」も夏場の季節の魚として食べるんです(詳しくはこちら(「こぞくら」ってどんな魚?北陸の夏の風物詩「こぞくら」について)をクリックしてみてください)。だいたいは煮付けで食べることが多いのですが、これが結構おいしい!もちろん、夏場の幼魚ですので脂がある訳ではないのですが、これはこれでなかなかのものです。こんなに小さいうちから獲っていたらそのうち枯渇しないかなぁ~とちょっと心配ではありますが、地元の方にお聞きすると昔から食べる習慣があるとのことで、さすが天然ぶりLOVEの北陸ですね。

ブリのように大きくなるにつれて呼び名が変わってくる魚を出世魚と呼び、一般には縁起の良い魚とされていますので、北陸に限らずぶりが水揚げされる地域では縁起物として祝い事の席で使われることも多いようです。結納などの際に大型の立派なぶりを贈るという風習もあったりするようですし(もらった方はそのブリをおろして半身で返す)、最近ではさすがにその風習はなくなりつつあるようですが、娘の嫁ぎ先に毎年正月にブリを贈る習慣があったりもするみたいです。でも、さすがに10キロ以上の大型ぶりになるとなかなか一般の人ではおろせないので魚屋さんでおろしてもらったり、とか結構大変なようですね(笑)。

大きなブリを三枚おろしにしたところ。
大きなブリを三枚おろしにしたところ。

大きなブリはおろすのもひと苦労です…。

■ブリの英名には「ジャパニーズ」と入っている!

ブリの生息域は東シナ海から北はカムチャッカ半島、太平洋、南はハワイ沖合までの広い地域で生息しているようです。

ちなみに英名ではYellowtail もしくは Japanese amberjackというようです。なんとJapaneseと入っているんですね!こんなに美味い魚はみんな食べてるやろ~と思って英語版のWikipediaを調べてみたのですが、

意外にもこれだけしか記述がない・・・。しかも内容はほとんど日本のブリの食文化についてでした。

It is greatly appreciated in Japan, where it is called hamachi or buri (鰤). They are eaten either cooked or raw, and are a seasonal favourite in the colder months when the meat must have higher fat content. Amberjack is typically thought of as a winter delicacy of Toyama and the Hokuriku region.

【意訳】(ぶりは)特に日本でハマチ、ブリと呼ばれて珍重されている。日本では加熱・生の両方で食され、厳冬期になると脂が乗ってくるため季節の魚として好まれる。冬の富山や北陸地方のブリは特に絶品である。

最近では韓国で水揚げされたブリも日本に輸入されたりしているのですが、やはり大消費地は間違いなく日本のようですね。こんなに美味しい魚なのにどうしてかな~と不思議に思ったりもするのですが、天然鰤って極寒の時期には脂が乗っていて最高に美味しいですが、夏場は脂があまりなかったりするので日本以外で水揚げされるブリはタイミング的に脂がない時期になってしまうのかもしれませんね。

■主な産地とその特徴
天然ものの水揚げについては農林水産省に統計がありましたのでそれを参考にさせて頂きました。

最新の2014年データで見ると、

総水揚げ量 10,320,000トン
第1位 千葉県(13,000トン)
第2位 長崎県(10,700トン)
第3位 島根県(9,500トン)
第4位 石川県(7,600トン)
第5位 北海道(7,300トン)

という結果でした。ちなみに氷見寒ブリで有名な富山県はたった1600トンです。

イメージ的には「日本海の荒波とブリ」ということで日本海が水揚げの中心になっているのかな、と思っていたのですが、太平洋に面する千葉県(恐らく銚子港中心?)が首位で2位が東シナ海に面する長崎県というのは驚きでした。ちなみに我が石川県は平成20年の同統計では9300トンで全国1位(同年総水揚げ量761百トン)に輝いていました。

金沢港に水揚げされたばかりのブリの動画はこちらをクリック

ここ数年の都道府県別水揚げ推移をグラフ化してみると

平成22年は山陰地方で天然ブリが大漁だった様子ですが、それ以外の年は各県とも安定した水揚げといったところでしょうか。

ただ、注目すべきはやはり北海道!北海道と言えばサンマや鮭のイメージが強いですが
北海道の秋鮭水揚げ
秋鮭
平成20年にはブリの水揚げが600トンだったのに、平成24年には7300トンとなんと12倍も増えています。しかも上のグラフから判るように単年の豊漁ではなく徐々にそして確実に水揚量が増えていっています。やはり地球温暖化に伴う海水温度の上昇に原因があるのでしょうか・・・。

■ぶりの栄養価

詳しい栄養価については文部科学省の五訂増補日本食品標準成分表をご覧頂ければと思うのですが、簡単に効能をまとめると

  • DHA(ドコ サへキサエン酸)とEPA(エイコサぺンタエン酸)が多く含まれており、 学習・記憶能力の向上に加え、動脈硬化・心筋梗塞 ・脳梗塞・糖尿病などに対して予防効果があると言われている。
  • 糖分やコレステロールの代謝を促進するビタミンB 1、B2、ナイアシン、歯や骨の素となり骨粗鬆症を防ぐカルシウムの吸 収を促すビタミンDも豊富である。
  • ファイト一発!でおなじみのタウリンはコレステロールの代謝促進や肝臓強化に優れた効果を発揮するらしいのですが、そのタウリンが豊富。中でも血合肉には普通肉の3倍量も含まれている。

ということになるようです。美味しいのに体にもいいなんて、嬉しいですよね。

■ぶりの寄生虫

一般消費者の方から上がってくる問い合わせで多分一番多いのがこの寄生虫。私も何度かお目にかかったことがあるのですが、こんなやつです・・・。

ぶり糸状虫
https://www.cty-net.ne.jp/~noro-m/page053.htmlよりお借りしました。

私はずっとアニサキスの大きいヤツだと思っていたのですが、ブリの場合はブリ糸線虫という別の寄生虫なんですね・・・。

東京都保健局のサイトによると、人に寄生はしないとのこと。通常の寄生虫と同じく加熱や冷凍で死んでしまうみたいです。食べても人体に影響ないと書かれていてもやはり見ていて気持ちの良いものではないので、当店の加工現場でも見つけたら除去するように指示しています。経験則的に言えば、この寄生虫はブリの血合い付近にいることが多いような気がします。

同じサイズのブリでも暖かい地域の天然ぶりには寄生している確率が高く、寒い時期や気温の低い地域のブリにはあまりいないようです。あくまでも個人的な経験則ですが、冬場に北陸や新潟から仕入れた天然ブリではこの寄生虫を見たことはありませんので、やはり海水温と関係があるのかもしれません。個人的所感で申しますと春先以降の九州・山陰のブリには寄生虫がいる確率が高く、価格よりも品質を重視されるお客様にはおススメしにくいのが現実です。ただ、上述の水揚げ量からも判るように長崎産ブリフィーレなどはかなり水揚げがあって安いので、加熱向け業務用天然ブリとしては長崎産がかなりのマーケットシェアを確保しています。価格重視のお客様もたくさんいらっしゃりますので、この辺はお客様のニーズに合わせて使い分けをするというのが一般的なところです。

■養殖ブリ

ここまでは天然のブリについて書いてきましたが、最近ではすっかり定着した養殖ブリ。出荷されるメインサイズが4キロ前後のものであることが多いため(養殖業者の視点で損益分岐点を考えるとこのくらいのサイズが一番費用対効果が良い)、最近では養殖ものを「ハマチ」と呼ぶ場合もよくあるようです。天然ブリの本場・金沢市中央卸売市場でも見ない日はありませんが、主に鹿児島・熊本、瀬戸内海といった比較的暖かい地域で養殖されていることが多いです。

養殖ブリのどの程度普及しているのかな、と思い調べてみました。まとめたのが下の表です。

なんと!毎年15万トン程度が出荷されているようです。ということは・・・

天然ブリ水揚げ量 10万トン
養殖ブリ出荷量  15万トン

ということで
養殖>天然
という驚きの結果が判明!

ここまで普及しているとは正直思いませんでした…。天然ものはコゾクラみたいな小さいものまで含んでの数値ですから、実際に流通している割合で言うともっと養殖物の比率が高いということですね。主に天然ものを扱う者としては天然の希少性を打ち出していってもいいのかな~とも感じます。特に先日より特集している天然寒ブリなんて、この統計からするとかなり希少なモノになりますもんね。

さて養殖もののメリットとしては

  • 天候に左右されず供給が安定している。
  • 価格帯もある一定の範囲内で推移することが多く、予算も立てやすい。
  • 常に一定以上の脂がある。
  • 色変わり(特に血合い部分)がしにくい。

という点が挙げられると思います。居酒屋さんなどの飲食店ではブリの刺身は人気商品ですから入荷がない、という訳にもいかないため、やはり安定供給できるという点は高く支持されているようですね。

ちなみに養殖と天然では栄養価にほとんど違いはないようですが、養殖のブリがいつも脂があって血合いの色も変わりにくいのはエサ(飼料)に魚脂や抗酸化物質を混ぜているからだと教わったことがあります。一時期はエサに混ぜる抗生物質の人体に与える影響などが問題になったりもしましたが、最近は天然素材を活用した飼料も開発されてきているようですね。

■ブリの消費はどこが多いのか?

こちらは総務省統計局の家計調査データを調べてみました。

ぶりに消費する金額のランキング(2人以上の世帯での年間支出金額)です。
全国平均 3,244円
第1位 富山市(8,790円)
第2位 金沢市(7,611円)
第3位 福井市(5,031円)

なんと、北陸3県がトップ3を独占!
消費量でも1位富山市、2位金沢市、3位松江市、4位福井市とトップ3独占は逃したものの、3位に松江市が入っただけでやはり北陸強し、という感じです。この数字を見ると金沢市中央卸売市場に千葉や山陰、太平洋側のブリも大量に入荷してきているのが納得できます。

ちなみにランキング(消費金額順)を見ていると、1位の富山市以下26位の新潟市までは全て北陸以西の県庁所在地もしくは政令指定都市で占められているのは興味深い数値です。逆に鮭は第1位の青森市を筆頭に17位の京都市が登場するまで全て関東以東・以北の都市が占めているのも面白い!

西の横綱「ぶり」、東の横綱「さけ」
といった感じでしょうか。

■ブリの食べ方

生食として

ぶり料理は色々ありますが、まず何と言っても美味しいのはブリのお刺身。特に大型(10キロ以上)の魚体の天然寒ブリは舌でとろけるような脂のノリで最高です。

ぶりの刺身
美味しい魚は人を笑顔にします。

また最近ではこの生食用のぶりを薄くスライスしたぶりしゃぶもかなり定着してきました。個人様向けのお店「おさかな料理の柴田屋」にはこんな商品もありますのでよろしければ↓
氷見産天然ブリシャブセット

加熱調理で

火を通して食べる調理方法としては、

ぶり照り焼き

今やテリヤキは世界共通言語。ブリ料理の中でもぶりの照焼は王道料理のひとつですよね。

ぶり照り焼き
TERIYAKIは世界の共通語です。

ぶり西京漬

京料理の王道・西京焼き。これも古くからブリ料理の定番ですね。甘みのある白みそと脂の乗った天然ぶりの組み合わせは最高です。
ぶり西京焼き

ぶり塩麹漬

塩麹に漬け込むと旨味も増して身が柔らかくなります。何より冷めても比較的柔らかい状態のままというところが嬉しいですね。
ぶり塩麴焼き
などの漬け魚が上品なイメージで好まれます。ブリと言えばテリヤキや漬け魚の味付けナンバーワンの人気を誇る西京漬けが王道ですが、ブリは加熱すると少し身が締まるので身質が柔らかくなる塩麹漬けもおススメです。

ぶりかま

あと、忘れてならないのがぶりかま。焼いても煮ても美味しいですよね。しかもどんなに大きなブリでもカマは1尾に2個しかない希少部位。スーパーなどで売っていたら迷わず買いましょう。
ぶりかま塩焼き

ぶり大根

もう一般的な料理になった感がありますが、伝統的な加賀料理のひとつがこのブリ大根。ブリの旨味がしみ込んだ大根がたまらな~い。

ブリ大根
ブリ大根は加賀の郷土料理でもあります。

ブリの旨味が大根に浸み込んで美味しい!身体も心から温まりますよね。

その他、郷土料理として

かぶらずd
ぶりのかぶら寿司

塩ぶり
巻きぶり

などというものもあります。

高級な天然寒ブリのブランド

天然寒ブリと言えば富山県の氷見ブリが有名ですが、やはり年の瀬から2月くらいの寒~い時期に北陸で水揚げされる大型のブリは最高です。
寒ぶり

旬の時期の寒ぶりの身質
旬の時期の寒ぶりの身質

北陸の天然寒ブリのブランドでは「氷見寒ブリ」と「能登天然寒ブリ」の2大ブランドがあるのですが、どちらも旬の季節になると脂が乗りまくっていて最高に美味しいです。この2大ブランドについては別記事にて特集していますので、是非そちらもご覧ください。

↑バナーをクリックしてください↑[/caption]


上述のように、最近では北海道をはじめとして北陸地域よりも寒い北日本でも天然ブリが獲れるようになっていますが、海水温度が低いことはもちろん絶対に必要な条件ですが、荒波の日本海を北上して北海道沖から戻ってきた運動量たっぷりの天然ブリが「自然のいけす」と言われプランクトンや小魚が豊富な富山湾内でしっかり栄養を蓄えて最高に美味しくなったのが北陸の天然寒ブリです。個人的にはやっぱり北陸の天然寒ブリが最高だなぁ~と思っています。

今では養殖ブリの流通量が60%を越えるなか、天然ぶりというだけでも価値があるところなのでしょうが、その中でも特に貴重な旬の時期の大型天然寒鰤。

天然寒ぶりは身質・脂ノリ共に最高です。
天然寒ぶりは身質・脂ノリ共に最高です。

10キロ以上の最高級サイズになると市場の卸値でも1尾で30,000~50,000円以上する高級な魚ですが、満足すること間違いなし!是非機会があれば召し上がってみてくださいね。


個人様向けのおさかな料理の柴田屋ではこんな商品も扱っています。季節限定商品ですが、ご自宅用はもちろん、ご贈答品としても喜ばれております。
氷見産天然寒ぶりしゃぶしゃぶバナー

天然ぶりも弊社が運営している鮮魚専門店より発送可能です!
※ただし1尾単位からになります。

↑バナーをクリック↑